レポ続きです。
前回→【ネタバレなし】映画『THE FIRST SLAMDUNK』を見ました。
今回は【ネタバレあり】編です。
あらかじめ言っておくと自己満足全開で書いているので長いです、すみません。
映画をみる予定がない人、スラムダンクに興味がない人も、どういう映画なのか感じ取っていただけるかもしれないのでぜひざっと目を通していただけたらうれしいです。
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映画を見た直後の兄弟の会話。
ちょび「エンドロールの後のシーン、あれって写真になんか写ってた?」
兄「あれは戻したってことでしょ。」
ちょび「そうか、そうか、そういうことかー、いいシーンだわ、いやほんと最高だわー。」
姉「最後、お母さんにリストバンドわたすところで、お母さんリストバンドを海に投げるかと思ったけどそうはならなかったね。」
ちょび「それはないよー。でも、それはそれでありかもねー。」
ということで、このちょび三兄弟の会話が本作のテーマを物語っています。
これは原作コミックでは描かれていないテーマです。
兄弟愛・家族愛
まさか、スラムダンクがこのテーマでくるとは思いませんでした。
奇しくも、宮城兄弟もちょび兄弟も三兄弟。
見るべくして兄弟3人で映画を見に行ったのかもしれません。
そして、こうやって考察ができること。
いわゆるガチ勢、あんまり言いたくない言葉ですが、「懐古厨」が求めている原作の忠実な再現、それが本作で行われていたら、われわれ兄弟の会話はありませんでした。
宮崎駿作品、庵野秀明作品然り、本当にいい映画、ヒット作は考察のしがいがある作品です。
いろいろな視点、見方があるからこそ何度見てもあきない、何度見ても新しい発見がある。
本作はまさにそのような考察のしがいがある作品だと思います。賛否両論あっていい。
とくに本作は原作と比較できるというのがおもしろい点です。
なぜ井上先生はあのシーンをカットしたのか、井上先生の意図がどこにあったかを考えることで本作をより深く理解することができるようになると思います。
ということで、このままとりとめもなく語りそうなので以下のポイントに絞ってお話しします。
①本作のよくなかった点
②声優交代について
③春子への告白シーンのカットについて
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①本作のよくなかった点
前回の記事で大絶賛しましたが、映画を見て、ん?と思うところはいくつかありました。
『リアル』や『バガボンド』の延長線上にあるスラムダンク、いうなれば『ヤンジャン版スラムダンク』『モーニング版スラムダンク』。
画風や作風がまさにそうなんですよね。
もはや、コミック版やアニメ版のギャグ要素がほぼ皆無。
ゴリへのカンチョー、ギャグシーンとしての演出がないのでそのシーンが浮いているような印象を受けました。
本作は重い、重くて硬派。
宮城のキャラがかわってないかと、別人じゃないかと思わずにはいられませんでした。
『ヤンジャン版スラムダンク』になったことによって一番影響を受けていたのは春子。
春子がびっくりするほどかわいくない。
これは受け入れ難い点でした。
ただ、これは宮城視点になったからだという意見をいただいて、確かにそういう見方ができるなと思いました。春子に比して、彩子がかわいい。
あと、本作の悪かった点、前回記事にも書きましたがプロモーション。
イヤでも情報が目に入ってしまうので、ぶっちゃけ鑑賞前に宮城主軸の山王戦ということは分かっていました。それ以外のことは分からない状態で、原作を改めて一周したうえで見ました。
それでも十分に楽しめました。
だから、そのへんの情報を出し惜しみする必要なかったのにと思います。
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②声優交代について
全く気になりませんでした。
ただ、最初新声優陣の声が公開されたときは違和感が強かったです。
YouTubeでアニメ版がお昼に一話ずつ公開されていたのをちょくちょく見ていたのでなおさら。
とくに桜木。僕は世代的にジャイアン=木村昴さんではないので、その声を聞いてジャイアンが頭に浮かぶことはありません。それでもプロモーションの動画で「天才桜木!」を聞いた時は違和感しかありませんでした。
しかし、映画を見ると不思議なことに違和感はありませんでした。むしろ合ってました。
上述したとおり、原作から画風作風の変化が大きく、しかもそれは開始5分程度で悟るものなので、アニメ版の続きだという頭にならないし(ストーリー的に続きですけれども)、ストーリーを追うことや試合展開についていくことに意識がもっていかれ、もはや声の変化がそれほど重大なことではなくなってるんです。
むしろ、声優交代しない方がおかしくなってたと思います。要するに、旧声優陣だとコミカルになっちゃうんですよね、とくに桜木と宮城は。旧声優陣はいい意味でクセがあって、新声優陣はよくもわるくもナチュラル。誰がしゃべってるか分からないところがありました。
声の違和感を感じたのは安西先生でした。
安西先生、こわくない?みたいな。仏(ほとけ)感がないんですけどっていう。
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③春子への告白シーンのカットについて
告白シーンって言うのは合ってない気がするんですが、一般的にそう言われているのでそう書きます。「大好きです。今度は嘘じゃないっす。」のところです。
これがカットされたことで、こんなのスラムダンクじゃないって怒ってる人が一定数います。
僕的にはカットして正解だったと思います。
見ててカットされてるなとは思いましたが、気になりませんでした。
むしろ赤木が泣くシーンのカットの方が気になりました。そこカットしちゃうかーと。
春子への告白シーンのカット、冒頭で述べたテーマでスラムダンクを描くとしたら仕方ないでしょう。
告白シーン入れたら宮城の存在、いうなれば本作のテーマがうすれちゃう。
桜木と春子の関係を丁寧にたどらないと、かえって不自然なシーンになってしまいます。
井上先生は宮城をメインに描くことをこだわり抜いたと思います。
僕は鑑賞前、本作が宮城を主軸にした山王戦と聞いた時点で駄作決定やんと思ってしまっていました。
山王戦はどうあがいても宮城主軸になり得ないから。
いや、スラムダンクという作品自体、桜木と流川という大きな軸ありきで展開する物語で、それが最後のブザービート、ハイタッチにつながるわけですよね。
圧倒的存在感のある桜木流川コンビを活かしつつ、いかにして宮城のドラマに仕上げるか、それが本作の大きな挑戦だったのだろうと思います。
だからこそ、山王戦の勝利だけで終わらせなかった。
決して守りに入らず、批判を受けることを覚悟で新しさを追求した。その姿勢に敬意を表したいです。
そういったことに目を向けない、原作原理主義の懐古厨のみなさんに一言。
いちばん過去にこだわってるのはアンタだろ・・・
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ということで、大きな3つのポイントで語りましたがまとめに入ります。
前回記事で興行収入うんぬん書きましたが、井上先生は売れるものをつくるとかそういう発想で映画をつくっていないということが分かりました。
売れる作品にするなら原作の忠実な再現で足りたでしょうから。
もっと軽い、万人受けするタッチで映画つくればいいわけですから。
そうしなかった井上雄彦、かっこいい。
桜木という天才を主役にせず、あえて低身長というハンデをもつ宮城にスポットを当てたこと、そのメッセージ性はとても大きかったと思います。
170cmに満たない低身長の世の人間、つまり僕にとって宮城はヒーローでした。
180cm弱ある兄にチビ、ちび、ちょびと言われて生きてきました。
ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!!
チビは決して卑下することではない。
大きな相手に果敢に挑む宮城の姿に勇気をもらって育ちました。
そして、年を重ねれば重ねるほど、天才肌のキャラより苦労人キャラに自分を重ねちゃったりするんですよね。
だから、もう本作の宮城を見ているとほんと辛くなってくる。
井上雄彦はわれわれに何を伝えたかったのか。
映画版スラムダンクの考察動画でおそらくもっとも再生数が伸びているツッチさんの動画。
名シーンのカットやプロモーション方法、あらゆる点をポジティブに解釈している、とても好感がもてる考察動画です。
この動画で井上先生のツイートが紹介されています。
いいね。「成功」の評価軸は他者にゆだねてしまいかねないけど、「成長」はつねに自分に起こること。@jimmiehayakawa
— 井上雄彦 Inoue Takehiko (@inouetake) 2013年6月25日
ここで先日ブログで取り上げた長友選手の言葉がオーバーラップせずにはいられません(メンタルモンスターになる。)。
「成功は約束されていないけど、成長は約束されている。」
(長友佑都『[メンタルモンスター]になる。』32頁)
湘北が山王に勝ったのは、圧倒的王者である山王に敗北感を抱いてもなお戦い続けた湘北の成長の証です。
敗者である山王も(とりわけ沢北は)、湘北戦の敗戦によって成長の大きなきっかけをつかみます。
宮城は多くの葛藤を乗り超えて夢に挑戦し続けます。
負けは失敗じゃない。
宮城という人間を通すことによって、そのメッセージはより鋭くわれわれの胸を突き刺すものとなります。
もはやツッチさんの考察をそのままパクらせていただいている状態になってきました。
ツッチさんの動画、ぜひご視聴ください!
本当にいい動画で映画の感動がよりいっそう大きなものになります。
以下、ツッチさんの動画からの引用。
問題児で悪いか。
元中学MVPで悪いか。
自分勝手で悪いか。
素人で悪いか。
ゴリで悪いか。
好きなことに挑戦して悪いか。
映画『THE FIRST SLAMDUNK』は前に進もうとする全ての者にエールを送る作品です。
とにかくねー、もうねーまじで、
自分に足りないのは断固たる決意です。
ダンコちょび。
必ず遂げます。
あきらめたらそこで試合終了ですから。
その先に向かっていつまでも走り続けたい、走れなくなる時がきても成長し続ける自分でありたい。
来年2023年、グランドスラマーになる!
なんつったって、
自分は、
完